2008/04/11掲載
現在のコンピュータが
情報を扱う基本単位として、
広く用いられているのが、
0と1の二進法からなる「ビット」。
一方、今後発展の期待される
量子情報処理の基本単位は
「キュービット」と呼ばれています。
キューピッドじゃないですよ、念のため。
でも、いたずら好きなところは
似ているかもしれません。
さて今回は、
この小さなキュービットについて、
さっそくご紹介してまいりましょう。
キューピッドみたいでかわいいけれど、
キュービットっていったい
どういう意味なんですか?
古典的な「Bit(ビット)」に
quantum(量子)の「Q」がついた、
「Qubit(キュービット)」です。
「量子ビット」とも言います。
なあんだ。
つまり量子の世界のビット
という意味なんですね。
ということは、スケール感でいくと、
今のコンピュータのビットより、
だいぶミクロなものなのかな?
はい。
ふだん私たちが使っている
「古典的コンピュータ」の1ビットは、
0と1を構成するのに
たとえば電子が30個あったら「1」
なかったら「0」というふうに区別して
信号を処理しています。
これが原子1個といったスケールに
なると、量子的なふるまいが
顕著になってきます。
つまり古典的なシステムにとって
エラーとなるような現象が
いろいろ起きてきてしまうんですよね。
(第22週参照)
そうですね。
そしてさきほどの例でいうと、
電子が30個ある、電子がひとつもない
という物理的に明白に区別できる
2つの状態に、0と1が対応しています。
そして必ず0または1のどちらか
でなくてはなりません。
このようにして、
1ビットの情報を担っている、
それが、古典的な1ビットと言えます。
ええ。まあそれはわかります。
これと同じように、
量子の世界で、1ビットの情報を
担えるようにしたものが
キュービット(量子ビット)です。
しかし量子は、古典の場合と違い、
その状態が、0と1の
重ね合わせ状態になっています。
ひゃ、待ってくださいよ、
重ね合わせ状態のまま、
使っちゃうんですか?
そこがポイントです。
では重ね合わせ状態とは、
どういうものでしたか?
ああでもなくて、こーでもない
って状態でしたよ。だからつまり、
0と1がいくぶんかずつ含まれる状態。
(
第16週
、
第17週
を参照)
そうですね。
この小さな0と1のあいだに
三次元にひろがる空間があって
その球面上の点のどこかに状態がある。
そこでこれを測るには、
まず測定の向きを決めなくてはなりません。
ふむふむ。
たとえば、図のように測定の向きを
まず「たて」と決めるとします。
そして測定を行うと、
必ず0または1という値が得られるように
しておくわけです。
0と1しかない古典の場合と比べると
ずいぶん複雑な感じがします。
はい。キュービットは、
いろいろな状態であり得るので、
どの向きで測定するのか、
その向きはキュービットの状態に
合っているのか、ということが
たいへん重要になります。
しかも──
量子は測定を行うことによって
測定結果に応じた状態に
変化してしまいます。
そういえば、そうだった!
(第15週を参照)
こういった点がみんな、
古典のビットにはない、
キュービットならではの特徴に
なってくるわけですね。
……というわけで
今週はこれにて。
あ、行っちゃった。
ちょっと、しつもんが……。
(つづく)
測らなくてはわからないし、
測れば状態が変化してしまう──
このやっかいな量子を、
情報処理に役立てるための
基本単位が、キュービットという
アイデアだとも言えます。
不思議で、いたずら好きな
このキュービットを使って
将来、暗号・通信・コンピュータなど
いろんなものが実現するんだそうですよ。
どうやって? どんなふうに?
と、いろいろ新しいことだらけですが
来週へと続きます。
どうぞお楽しみに。
第21週~第30週
2008-03-28
2008-04-04
2008-04-11
2008-04-18
2008-04-25
2008/05/02
2008/05/09
2008/05/16
2008/05/23
2008/05/30