2008/05/30掲載
2007年10月から、
ほぼ毎週金曜にお届けしている
『週刊リョーシカ!』。
まずは「マトリョーシカ編」からスタートし、
続いて量子的な考え方に親しむ「量子力学編」、
そして現在は「情報処理編」をお送りしています。
第3集にあたるこの「情報処理編」では、
古典と量子の「情報処理」の違い、
すでに実用化へ向けた研究が進められている
量子技術である量子鍵配送(BB84)、
情報処理に欠かせないエラー訂正
などが話題になってきました。
そこで今週は「情報処理編」のまとめとして
このような量子的な技術が今後どうなるのか?
将来のリョーシへと
イメージを広げてみたいと思いますよ。
では、どうぞ。
毎週リョーシのことを考えていると、
なんだかだんだん不思議なものじゃなくなるから
人間って慣れですねえ。
人間?
いや、あの、その猫でも。
同じですよ、そのへんはね。
人間とは長く暮らしてますから。
量子的な技術は、これから
いろいろなかたちで
私たちの身の回りに入ってくると
思いますよ。
たとえば、量子的な現象が
マクロなものにも見られるようになって
半死半生の猫
が現れたり……
量子情報処理を応用した
量子事務処理とか、量子会計処理
なんていうのもいいですよねえ。
え? 何ですか、それは?
データをインプットしておいて、
あとは測定さえしなければ……
いつのまにか仕事ができちゃう。
うーん……。そういう方向では
実現しないと私は思いますね。
ただ、量子的な性質を活用するアイデアが
今後いろいろ出てくる可能性はあります。
誰も思いもつかなかったような、
面白いアプリケーションが出てきたり、
といったことが活性化すると楽しいですね。
うーん。どどーんと変わるのは
まだなのか……。
いや、そんなこともありませんよ。
量子効果を使ったデバイスとか、
量子制御を取り入れて作った材料などのように、
特に私たちからは目に見えない部分に、
これからどんどん量子的な技術が
浸透していくのではないかと思います。
逆により身近なところで
「量子の入ったケータイ」のようなものが、
現れる可能性もあります。
いつの間にか、どこもかしこも
って感じ?
そうですね。
テクノロジーは、現在のところ
古典的な物理学に基づく、
古典的な技術標準によって
基礎づけられています。
「技術標準」って、
重さや長さの単位とかのことですか?
つまり、ものさしってこと?
ものを正確に測る「測定」などは
まさに技術標準のひとつだと言えます。
ふむふむ。
そこで、たとえば測定のような
基礎的な技術標準が
量子的なものへ移行することによって、
科学技術にパラダイム・シフト
と呼べるような変化が起こります。
モトから変わるわけですね。
その通りです。
じゃあその次は量子情報処理!
ええと……そうですね。
たとえば量子鍵配送などは
1キュービットを用いた技術なので、
現在、実用化へ向けた研究が
進められています。
一方、量子情報処理という場合は
ふつう2つ以上のキュービットが
コントロールできなければなりません。
ところが2キュービット以上を扱うとなると
急激に制御が難しくなる
という問題があるのです。
さらに量子コンピュータのように
大規模な量子情報処理の場合は
相互作用したたくさんのキュービットを
使って計算することになります。
うむむ。
キュービット 2つ以上は エンタングルメント
確かにそれは難しそう。
しかし現在すでに、
2キュービットの制御も
可能になってきています。
ほほう。
今週はこれにて。
(つづく)
ちょっと10年前を
思いだしてみてください。
(うう、思いだせない)
私たちの暮らしにパソコンがあるのが
かなりふつうになったのは、
ほんとうにごく最近ですよね。
それだけではなく、
この間に「情報処理」ができること、
これによって解明されたことも、
ずいぶん多いのだそうですよ。
というわけで、情報処理については
もっといろんな話題があるのですが
今回で、いちおう一段落といたします。
そして次回からは、
確率と統計にまつわる話題を採り上げる
新シリーズがスタート。
ところで確率って何?──
というあたりから、そのエッセンスに
迫ってみたいと思いますよ。
来週も『週刊リョーシカ!』を
どうぞおたのしみに。
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