2008-04-04掲載
先週は、0と1からなるデジタル方式が
情報を記述する、
なかなかナイスな方法である
というお話でした。
私たちが日頃使っているコンピュータは
まさにその方式で動いているわけですね。
しかし方式は同じでも、
コンピュータには、端子の種類や
使えるアプリケーションなどなど、
たくさんの違いがありますよね。
では、そんな中で
最もコンピュータの性能の
決め手となっているのは何か
と考えてみてください。
それによって価格もぐんと違うもの。
それ以前には不可能だった新しいもの。
──そう、それは速さです。
コンピュータの性能は、
速さによって決まっているのです。
リョーシカ! これみてください。
知ってるとは思いますけどね。
ムーアの法則です。
はい。
半導体の性能は18~24ヵ月で倍になる、
という予言を、グラフにしたものなんです。
「10年ひと昔」という言い方にならえば
コンピュータの場合、実に
1年半から2年で、ひと昔なんですねえ。
ふむふむ。
ムーアの法則は、私もときどき
講演会などでご紹介しています。
ムーアは、世界的な半導体メーカーIntel社の
創設者のひとりですが、これをなんと
早くも1965年に予言したんですね。
非常に輝かしい発展を予言したもの
と言えるでしょう。
コンピュータの性能は、現在も、
だいたいこの法則に沿って
発展していますね。
そう、予言したのもすごいし、
本当に発展してきたのもすごいですよねえ。
では、どうすれば
より速いコンピュータが
作れると思いますか?
なぜなら、速さには
限界が知られているからです。
どんな速さも光速を超えることはできない、
というものです。
はっ! それはもしかして相対性理論!
そうか。現代物理学の2本の柱といえば
量子論と相対論。
そのうちの相対論が、“世界最速”の
速度の限界を示しているのですね?
ええ。相対性理論により、
信号の速さには限度があるのです。
コンピュータの中には
情報を処理したり、蓄積したりする、
たくさんのコンポーネントが詰まっていますが、
速くするには、それらの間で、
信号をやりとりする距離を
短くしなくてはなりません。
これらをどんどん短くしていくと、
コンピュータは全体として、小さくなります。
“より小さく”が“より速く”をもたらすのです。
なるほど、それでコンピュータは
どんどん小さい、ナノと言われる世界へ
入ってきたんですね。
だけど速さに限界があるように、
小さくするのにも限界があるような……。
その限界は、量子と大いに関係があります。
2010年代にはその小ささが発展の壁となる
「量子領域」に入ると考えられています。
「量子領域」というのは、
古典物理学が通用しない、
量子的なルールが支配する世界です。
なるほど。それでまったく新しい、
量子コンピュータの出番なわけですね。
でもコンピュータの発達としては
むしろ自然のなりゆきという感じもします。
アプリケーションなんかも使えるんですか?
それはまず、あり得ないですね。
現在私たちが使っているのは
すべて「古典的なコンピュータ」ですが、
量子の性質があまり活発になると
古典的なコンピュータにとっては
エラーとなってしまいます。
そこで量子領域に入っていくにしたがって
ひとつには、量子的な性質が
エラーを起こさないようコントロールして、
古典的な情報処理にうまく利用していく
という方向性が考えられます。
しかし、量子コンピュータは、
そういった方向性とも違うものです。
量子のポテンシャルを中心に据え、
飛躍的に高いパワーを引き出そう
というまったく新しい試みなのです。
ふうん……。
早く見たいですねえ。
私もです。
(つづく)
あんなに順調だった
コンピュータの発展にも
2010年頃、限界が訪れるとは……
1960年代当初は、輝かしい未来を
予言したであろうムーアの法則が、
今やその限界を指し示しているんですね。
ちょっとショック……。
発展のあとには行き詰まりが来る。
それはつまり、その頃になると、
次なる新しいものが見えてくるからだ
──とリョーシカは言います。
ではそのまったく新しい情報処理、
いったいどこがどう新しいの?
というあたりを、次週から
攻めていきたいと思いますよ。
どうぞおたのしみに。
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