2008-08-08掲載
「確率の考え方編」もついに最終回。
今回は、これまでの話を総合して
「エンタングルメント」
を採り上げたいと思います。
エンタングルメントなんて、
この時期、ちょっとぐったりするような
話なんですが……
えーと、このエンタングルメント、
最初に出てきたのが
第20週の「もしも量子がふたつなら。」
の回でしたよ。
エンタングルメントというのは、
量子ビットが「2つで1つ」の状態を
構成している場合をいいます。
そこで先週までずっと考えてきた
エントロピーという尺度で
量子のエンタングルメントの度合いを
測ってみようというのが
今回のお話です。
では、どうぞ。
今週はなかなか量子らしくて
いいですねえ。
へっ? 何がですか?
エンタングルメントです。
やはり量子ビットがひとつだけでは
情報処理のような複雑なことはできません。
2つの量子ビットが一定の相互作用をしてできる
「エンタングルメント」した状態が
量子計算を担うのです。
ふむふむ。ってことは
エンタングルメントは、
量子情報処理には
欠かせないものなんですね?
はい、欠かせませんね。
で、そんな量子特有のエンタングルメントを
「エントロピー」で測るというのは
いったいどーゆーことなんですか?
エントロピーというのは、
どういう尺度かというと……
あ、それは先週やりましたよ。
「不確かさの度合い」でしょう?
量子系が、どれだけ混合しているか、
だったと思います。
(第39週を参照)
はい。
そして、エンタングルメントには量、
つまり、どのくらいエンタングルしてる
(絡み合っている)のかによって、
たくさんエンタングルしている状態から、
全然していないものまで、
その程度がいろいろなものがあるわけです。
その量を知るには、どうしたらいいのか?
そこで、まず、
最大にエンタングルメントしていて
混合の度合いがゼロである
2量子ビットを用意しましょう。
エンタングルメントは、
「2つでひとつ」の状態ですから
全体でひとつの
「pure state(ピュア・ステイト)」
を構成しています。
ふむふむ。
ところが続いて、右の量子ビットを
測定しますよ。
うーん、エンタングルメントが
壊れちゃいます。
(第20週を参照)
はい。するとエンタングルメントの時には
2つの量子ビットに共有されていた状態が、
失われてしまいます。
つながりがパチンと切れて
ばらばらになるんですよね?
ええ。
右の量子ビットは測定によって、
0か1のどちらかになります。
その時同時に、左の量子ビットも
右が1なら1、右が0なら0に変化します。
ところが、測定結果がわからなければ、
それがどちらなのか、わからないわけですね。
すると、0か1なんだけれども
そのどちらかがわからない、という
不確定になってしまいます。
全体としてピュアだったのが、
片方がなくなってしまうと、
残された方は、混合状態になってしまう
わけですね。
はい。
このように混合の度合いを測ることによって
元のエンタングルメントの量を
知ることが出来るのです。
この混合の度合いを測る尺度が、
「フォン・ノイマンのエントロピー」
ということになります。
ぴぇっ! そうなんだ。
はい。では今週はこのへんで。
(つづく)
全10回にわたって
お届けしてまいりました
「確率の考え方」編、
いかがでしたでしょうか。
熱力学の概念として誕生した
「エントロピー」は
シャノンによって情報量を測る考え方に適用され、
さらにフォン・ノイマンによって
量子系に拡張されて
エンタングルメントの量を測れるものへと
発展してきました。
あれれ……
というわけで、
ま、そろそろ夏休みですものね。
『週刊リョーシカ!』も来週は
お休みをいただきます。
再来週の22日、
また元気にお会いしましょう!
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