2008-01-25掲載
私たちが考え方の手順について
これは正しいとか、なんか間違ってるとか
思う基準をよくよく探ってみると
科学、なかでも物理の理論が
基になっていたりします。
量子が、それ以前の科学である古典物理学とは
相容れない世界観を持つ、ということは、
私たちが当たり前に科学的であるとか、
正しいと考えてきたことが、
いろいろ違ってきているということ。
何十年もたってから今を振り返ると、
昔はあんなふうに考えていたんだなあ、
なんて、私たちの考え方も
すごく変わってしまっているかもしれません。
さて先週に引き続き、
今週も量子の特徴である不確かな性質を
採り上げてまいりますよ。
ではどうぞ。
先週は量子は予測できないという話でしたけど、
そもそも世の中なんか予測できないんだ
と思うと、かえって気が楽になりましたよ。
そうですか?
本当はわかるわけないことを、
わかるかのように言うほうが
よっぽどあやしいですもん。
そうですか。量子を相手にする場合、
直感的に納得できない
と、感じてしまうことも多いので
そこで立ち止まってしまうよりも、
わからなかったということは憶えておいて
とにかく先へ進んでみるというのも
よい方法だと思います。
ところで、調べましたらね
“定まらない”のが“原理”だという
「不確定性原理」
というものまで
あるそうじゃないですか。
はい。1927年にハイゼンベルクが
提案したものです。
彼は
思考実験
というのを考えたんですね。
「思考実験」?
ええ。思考実験というのは、
こういう実験をしたら、
どんな結果が出るだろうか?
ということを、実際の実験ではなく
頭の中で行おうというものです。
後世になってから実際に実験が行われ、
思考実験が示した通りの結果となった
という場合も多いんですよ。
なるほど、面白いですね。
脳のフィールドワークみたいな。
ハイゼンベルクは、思考実験として
非常にミクロなものを測定する場合を考えました。
光をあてて、電子1個の位置と運動量を測ったら
どうなるだろう、と。
そして、位置を測れば運動量に幅が生まれ、
運動量の精度を上げれば、位置が不明になるという
二つの精度が反比例する関係が
成り立つことを確かめました。
ちなみにこの頃、数学の世界にも
不完全性定理というものが現れ、
哲学などにも、広く影響を与えました。
ふう~~ん。
で、いったいどういう意味なんですか?
そうですね、まず電子1個を用意して
「究極の精度」で、位置を測るとしますよね。
ええ。
位置を測るにはまず、
光をあてなければ見ることが出来ません。
ところが非常にミクロな世界では
光もまた、波であると同時に粒子ですから、
光をあてる=光子をぶつけると
電子がはじきとばされてしまう
と考えられます。
東京に積雪!──どんな風景も光がなければ見ることができない
つまり、位置を正確に測定すると、
運動量は、正確に測れなくなってしまう。
じゃあ、たとえば新幹線を測定する場合、
その列車は名古屋にいるけれども
時速何キロで走っているかはわからない。
ということになるんでしょうか?
そうですねえ、新幹線というのは
非常にマクロな例ですけれども
話としてはそういうことになります。
ミクロなものの測定を考えた
「不確定性原理」が出てくる前は
ただ測れば、両方とも
知ることができたんですよね?
そうですね。古典的な世界では、
なるべく正確に測ろうということですよね。
しかし、量子の世界ではそうはいかない。
私たちが、ある物質について知りたいと思う時に
その物質の位置と運動量という知識を
両方正確に得ることはできない、
ということになってくるわけです。
知りたいのに、知ることができない……。
というか、不確定性原理によって
その知りたい答えは、本当はないんだ、
ということがわかったんです。
不確定な状態にある、というのが
いわば、新しい答えなんです。
予測できないどころか
存在そのものが「確率的」……!?
その通りです。
量子的な世界では、物質はいろんな可能性を
同時に併せ持った状態にある、
と考えられています。
なんか今回は難しかったような……。
では、このへんで。
えっ!
(つづく)
いかがでしたでしょうか。
今回出てきた
「思考実験」
ですが、
20世紀最大の科学者といわれる
アインシュタインも、
量子に関する有名な思考実験を
いくつか残しているのだそうですよ。
頭の中で実験を考えるなんて
いかにも理論物理学者の得意技!
という感じですが、
具体的な現象などがあれば
もっとわかりやすいかも知れません。
というわけで次週は、そんな現象面からも
量子に迫ってみたいと思います。
どうぞおたのしみに。
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