第8週:古い考え方、新しい考え方。
2007-12-14掲載

先週リョーシカが「古典」と呼んだのは、
ニュートンの物理学でした。

「古典」といえば、古典落語とか
古典文学なんて言うときの、あの「古典」。
この反対を現代文学、新作落語と言うように、
私たちの時代の物理学を、現代物理学と言います。

そしてこの現代物理学には大きく二つの柱があり
ひとつがアインシュタインで有名な「相対論」、
そしてもう一つが「量子論」だと言われています。

そこで今回は、リョーシと関わりの深い
この新しい物理学について
ざっくりとお話ししていきますよ。

わたし
しかしアマゾンか、樹海か……。


リョーシカ
どうしたんですか?


わたし
いや、リョーシってほんとに奥深いですねえ。


リョーシカ これまでも何度かでてきた
波であると同時に粒子でもあるという状態は、
最初に考えた物理学者たちにとっても
さぞわかりにくかっただろうと思いますよ。

量子論の初期のころは、まず
さまざまな自然の現象のうちに
古典物理学ではどうしても説明できない
2つの相反する証拠が見つかるんです。

そこで「量子」というものを考えて、
よくわからない部分を含みながらも
説明に成功していきます。


『ようこそ量子(丸善)』より

わたし しかし自分でもよくわからないのに
それまで正しいとされてきた古典物理学に
反対するというのは、結構大変じゃないですか?

リョーシカ そうですね。
ただいずれにしても科学ですので、
正しく検証されたものに基づいて、
シンプルで根本的な原理を追究していこう
という方法の点では同じだと言えます。

どんなに相容れなくても両方正しいのなら、
まったく新しい「量子」というものを
考えざるを得ない
ということだったのだと思います。

わたし なるほど、
正しいデータを正しいと考えるほうが科学だと。
だけどそんな「小さな」理由で
物理学の体系を否定するとは何事だ!
って反対する人がいそうですよね。

リョーシカ 抵抗に遭いながらも、結局のところ量子論は、
多くの科学者によって20世紀を通じて発展し
今では量子のさまざまなふるまいが
解明されています。


『ようこそ量子(丸善)』より

わたし 量子論はどちらかというと、ミクロの世界。
一方の相対論は、スケールのどでかい、
宇宙の理論というイメージがあります。

リョーシカ そうですね。
物理学的な理論に「場の理論」というものがあり
これが量子力学を含めて体系化されるのですが
重力についてだけはうまく説明できないんですね。
そこで重力を扱う相対論を採り入れて、
統一理論というものが考えられていきます。

わたし
統一というからには、何を統一するんでしょうか?


リョーシカ 力のやりとりを統一的に
説明したいということですね。

力には電磁気力、それから
強い力・弱い力と呼ばれるもの、
そして重力があるのですが、これらすべてを
統一的に説明しようということです。

わたし なんだか現代物理学のキーワードが
揃っちゃいました。
量子論、相対論、場の理論、統一理論……。

リョーシカ うーん……というかですね、
どれも物理を解明しようという探求なので
お互いさほど違うことを研究しているわけではなく、
むしろ自分はどこに焦点を当てるか、
という違いなんですよ。

わたし 量子論か、それとも相対論か
という時代ではなくて
それぞれの分野が重なり合いながら、
さまざまな方向へ研究が行われている、
という段階にいるんですね。

リョーシカ そうですね。
たとえば私は、自然界にありふれてはいるが、
非常に濃く量子性の現れる領域に注目して
これを使ってたとえば
量子コンピュータのようなものが作れないか
ということを研究していますが、
これは「量子情報科学」と呼ばれます。

この分野の特徴は、
わからないことがまだいろいろあることですね。
だから分野を超えた交流が必要だし、
視点を柔軟に変えてみる態度が求められますし、
非常に速いスピードで発展しています。

自分がこれだと思うアイデアを追究して
研究のカベを突破していくわけです。
したがって研究の進め方そのものも、
これまでとは違う、新しいスタイルになりますね。

わたし ……しかしリョーシカはまたなんで
この世界に入ったんですか?


リョーシカ
あ、それはまたの機会ということで。


わたし
え? あ、マテ・リョーシカ!

(つづく)



週刊リョーシカ!
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わたしのネコナデ声も聞かず、
リョーシカは去っていった……

しかし「新しい」って、軽く使ってますけど
本当に新しいことを発表するというのは
実際、大変な仕事ですよね。

まだ新しいわけだから、
本人だって、まだわからないこともある。
だけれども「そうとしか言えない」
「リョーシカ!としか言えない」
という事態なわけで。

さて、どんな"リョーシカ!"が飛び出すのか、
来週も『週刊リョーシカ!』をどうぞお楽しみに。

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