2008-10-31掲載
ちょうど1年前の10月26日にスタートした
『週刊リョーシカ!』。
このたび、シリーズ最終週を
お届けいたします。
今回のテーマはずばり
量子コンピュータを作ろう!
というお話。
いったいどこまで進んでいるのか、
どんなところが難しいのか──
もちろん闇雲に試すわけにも
いきませんから
まず理論ができることを示し、
これをインプリメンテーション(実装化)し、
具体的な実験で成功し……というように
実際には長い道のりがあります。
今回はそんな量子コンピュータの
理論と実証の研究の最先端を
かいつまんでご紹介しましょう。
こうやってみてくると、
量子元年のプランクから始まって
……(中略)……
今世紀には量子コンピュータだって
もうすぐできそうじゃないですか。
そうはいかないと思いますよ。
それまたどうして?
いくつもの超えなければならない
壁があるからです。
うーん……。
簡単ならば、すぐできて、
難しければ、すぐできない。
難しいけど、すぐできる、
ってわけにはいかないか。
トレードオフですね。
ちょっと待ってくださいよ、
そういうの、リョーシには、
よくありますよね。
確か……
波であるのに、粒子である。
(第4週を参照)
0でもあって、1でもある。
(第16週を参照)
2ビットあるけど、1つの状態。
(第20週を参照)
状態を知りたいのに、
測定すると状態が変わってしまう。
(第15週を参照)
量子を操作したいのに、
デコヒーレンスしやすい。
(第17週を参照)
うーん……
全然トレードオフの関係ではない
ものもありますねえ。
しかしまあ……量子では
相反するように見えるいずれもが正しい
ということは、
よくあると言えるかもしれません。
ところで、さきほど言った
「壁」というのが、
やはり「トレードオフ」で……
むむ!?
量子コンピュータを
動かすには、
量子ビットを計算できるように
初期化したり、
エンタングルさせたり、
ビットを測定して答えを読み出したり、
といったことができなくてはいけません。
ふむふむ。
つまり量子計算するためには
量子どうしを相互作用させる
必要があります。
ところが量子は、
ちょっとでも見たりすると──
壊れちゃう!
相互作用させたいけれども
量子的な状態を保たなければいけない。
つまりデコヒーレンスしないように
操作しなければいけない。
ここのところがトレードオフに
なっているのです。
うーん、出た、
あちらを立てればこちらが立たず、
痛し痒し、ですねえ。
たとえば光を使った
量子コンピューティングでは──
そもそも光というのは、
相互作用しやすい性質ですか?
それともしにくい性質?
うーむ。うーむ。
ええい、じゃ「しない」方!
そうです。光は、
とても相互作用しにくい性質です。
たいへん遠いところにある星々が、
私たちの地球まで届き、
星を見ることができるのも、
光が途中で相互作用して
どこかへ行ってしまったりしない
おかげです。
なるほど。
そこで、光の場合は、
比較的長い間、
量子的な状態を保つことができます。
ちなみにこの時間を
コヒーレント時間といいます。
ところが、相互作用させようと思うと
今度はなかなかしないので、
一苦労ということになってしまいます。
ふうん。
では相互作用しやすければ
いいのかというと
そうでもありません。
物質によっては、
相互作用はしやすいものの
量子的な状態を保つのが難しい
という課題を持っているものが
少なくありません。
保つのにはどうするんですか?
望ましくない相互作用が起こると
ノイズが発生し、
状態の量子性が失われてしまいます。
そこで、ノイズを抑えるには
ひとつには、十分に温度を下げる
という方法があります。
そうなんだ。
いろいろな方法が試されていますが、
将来の量子コンピュータが
どこから生まれてくるのかは、
まだわかっていません。
しかし、実験の世界では
特に近年、
いろいろと新しいことができるように
なってきていますね。
“ありがたい、ありがたい。”
量子という新しい時代の
つちおとが聞こえてきますねえ。
では、このへんで。
えっ!
(おしまい)
いかがでしたか?
1年にわたりお送りしてまいりました
『週刊リョーシカ!』。
今回でひとまずおしまいです。
毎週読み切りのスタイルなので、
どのページでも、ぜひお気軽に振り返って
リョーシ理解にお役立ていただければ
幸いです。
下の「コンテンツいちらんへ」の
リンクからもご覧いただけますが、
簡単なリンク集をもういちど
付けておきますね。
『週刊リョーシカ!』目次
第1集:マトリョーシカ編
第2集:量子力学編
第3集:情報処理編
第4集:確率の考え方編
第5集:量子コンピュータ編
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では、また逢う日まで!
これからもリョーシカ!を
どうぞよろしくお願いいたします。