第47週:これがなくっちゃ「ユニタリー変換」
2008-10-10掲載

さて今週は、
いよいよ量子計算の心臓部、
ユニタリー変換へと話を進めて
まいりますよ。

今回も わかる/わからない
という軸で考えると、
なかなかキビシイ、かも。

けれども、
リョーシを考える場合には
わからない時はほうっておく、
これがコツです。

そして、わからないところは
無理にわかろうとしない。
「なぜなら間違うから」と
リョーシカは言います。

折しもノーベル物理学賞のニュースが
飛び交っていますが、
かのアインシュタインでさえ
わからなかったのが量子ですから、
「わからない」を、
さほど怖れることもないはず。

しかも、当時に比べると、
かなり解明されていますよ。

というわけで、今週は
ユニタリー変換です。

ゆっくりまいりましょうか。

わたし もうこれだけリョーシのこと
やってきたんだから、
手っ取り早く教えて!
なんて言わないんですけれどもね……

リョーシカ
はい。


わたし だけども「ユニタリー変換」って
何なのか? ひとことで!
って言いたくもなります。

リョーシカ やはり、言葉だけで説明するのは
難しいですねえ。


わたし なんかぐちゃぐちゃしたもの、
と思うと、
化学変化のようなもの
というイメージにもなるんだけど
きっと違うんですよね?

リョーシカ
全然違います。


わたし がっくり。

じゃ、たとえば概念図を描いたら、
イメージ的には、こんな感じ?



わたし まず最初に初期化した量子ビットを
たくさん用意して、
ユニタリー変換して、
で最後に測定を1回すれば、
量子計算のできあがり!

リョーシカ ふむふむ。

量子計算では、演算につれて
量子の状態が、
ヒルベルト空間内を動いていきます。

この状態は、ヒルベルト空間上の点として
表すことができます。

そしてこれらの点ひとつひとつが
ベクトルです。


わたし でた! ベクトル。
でもこれ、第45週でやりました。


リョーシカ その通りです。
初期化した状態から、
1回だけ測定するまでの間、
状態が移動していく。
この時間発展がユニタリー変換です。

わたし そしてヒルベルト空間では
いろんな可能性が同時に起こっているから
並列計算になる!?

リョーシカ はい。時間発展は
答えへ向かって進行していきます。
そして最終的にひとつの解を得るわけです。

ついでに、量子計算のモデルは
時間発展だと言いましたが、
この時間発展は、可逆です。

古典計算ではふつう
時間に対して可逆ではないので
そういった違いもあると言えます。

わたし
ふむむ。


リョーシカ ところで、このユニタリー変換には
もう一つ重要な特徴がありましたよ。

ユニタリー変換が進行している間
してはいけないこと、
それは何でしたか?

わたし えっと、ええとーっと。
それはたぶんですね、
あっ、わかった!
「見ちゃダメ」でしょう?

だって量子性が壊れるもん。
第45週を参照)

リョーシカ
マトリョーシカ!


わたし そうか。こう見てくると
ユニタリー変換っていうのは、確かに
量子を活用した、
これまでとは全く違う、
計算のやり方なんですねえ。


リョーシカ
その調子で、来週もいきましょうか。


わたし
えっ! あれっ? マテ・リョーシカ!


(つづく)



週刊リョーシカ!
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実は今週も、
リョーシカは海外出張中。

ところでこの渡航中に、
量子の教科書づくりが
大詰めを迎えているそうなんです。

教科書というぐらいですから
大学生の方なんかが読むものなのですが
あ、これ『週刊リョーシカ!』で読んだ!
という箇所がいろいろ出てきます。

ちなみにこの教科書は
来年1月に刊行予定。
リョーシ猫のわたしも
今から楽しみでございます。

とはいえ、まずはムズカしいこと抜きに
来週も『週刊リョーシカ!』を
お楽しみください。

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