第48週:量子だってゲートを組みます。
2008-10-17掲載

「量子コンピュータ編」も
残り少なくなってまいりました。

ところで、量子ではなく
古典的なコンピュータの場合は、
ビットを初期化して、データ入力し、
0と1の情報を担うビット上の演算を行い、
ビットを読み出して答えを得る、
というのが大まかな流れですね。

これに対して、
量子コンピュータの場合は、
高次元なヒルベルト空間を
量子状態が解へ向かって移動していく
ということを見てきました。

量子系ならではの
この巨大な空間に着眼した計算方法が
量子コンピュータ。
というわけですねえ。

しかし、この巨大なユニタリー変換を
どのように実現したらいいのか、というと
どうもそこいらへんで、
わたしの想像力が、
ぶちん、と途切れてしまいます。

そこで今回のタイトルは
「量子だってゲートを組みます。」

そうなんです。
量子もゲートで演算できるんですって。

わたし ゲートって、
「門」って意味ですよね?


リョーシカ ええと、
情報処理でゲートという時は、
ロジックゲート、つまり
論理素子のことを指すのがふつうですね。

わたし ゲートを使って、
回路を作って、
計算するんですね?

リョーシカ はい。
古典的な情報処理では、
少数の簡単なゲートを用いて、
それを組み合わせることによって、
複雑な処理を行っています。

中でもよく用いられるものに
AND、NOT、ORという
3つのゲートセットがあります。

この3つを使って、ビット上のすべての演算を
組み立てることができます。


ゲートセット

リョーシカ ちなみにこのように
比較的少ない種類のゲートを用いて
すべての演算をあまねく構成できるゲートセットを、
古典的な情報処理ではコンプリートと言います。

わたし ふむふむ。
ということは……
AND、NOT、ORで、ひとつの
コンプリートなゲートセット
というわけですね。

これさえあれば、その組み合わせで
どんなにややこしい演算でも組める
というわけだから、
なかなか便利ですよねえ。

リョーシカ はい。
そこで、もし量子情報処理の場合も、
あるゲートセットがあれば
どんなユニタリー変換でも
ゲートの組み合わせに分解できる、
ということがわかれば、
古典の場合と同じように
うまく演算ができそうに思われます。

わたし え? あのユニタリー変換という
ぐちゃぐちゃのプロセスが、
なんとシンプルなゲートの組み合わせに?

ユニタリー変換をゲートに分解

リョーシカ
ええ。


わたし で、それは、その……
できそうなんですか?


リョーシカ
ええ。



わたし そうかあ……。
あの底知れない「ユニタリー変換」に
なんだかだいぶ把っ手がつく気がします。

で、それはどんなゲートなんですか?

リョーシカ 1量子ビット操作を行うゲートと、
2量子ビット操作を行うゲートの組み合わせで
すべてのユニタリー変換が実現できる
ということがわかっています。

わたし ふむむ。
1量子ビットといえば「重ね合わせ」
2量子ビットといえば
「エンタングルメント」でした。
第16週第20週を参照)

リョーシカ 量子計算のゲートとして
よく知られているもののひとつに
「CNOTゲート」というのが
あります。

「CNOTゲート」は、
エンタングルを生成する
2量子ビット操作ゲートです。

わたし
ふむむ!



リョーシカ ところで、少数のゲートで
すべてのユニタリー変換を構成できる
ゲートセットを
「ユニバーサルゲートセット」いいます。

さきほどの「CNOTゲート」
1量子ビット操作との組み合わせで、
「ユニバーサルゲートセット」を
構成できるのです。


わたし
そうなんだ……。



リョーシカ また、量子計算の
「ユニバーサルゲートセット」は、
これだけではなくて、
ほかにも何種類かがすでに見つかっています。

また同じユニバーサルゲートセットを使っても
ゲートの組み方はいろいろ考えられます。


わたし ということは……
ちょっとまとめますよ。

量子コンピュータの場合、
1 量子ビットを0の状態にして初期化
2 ユニタリー変換(ゲートに分解して演算)
3 量子ビットを測定して、解を出力

ということですね?

演算

リョーシカ
はい。


わたし やったー!
じゃあもう、できあがりじゃん。


リョーシカ そうですね。
で、何を計算しましょうか?


わたし
へっ?


リョーシカ これでまあ、計算機のほうは準備できた、
と考えるとしましょう。

しかし、ではどんな問題を、
どう解かせるのか?
まだ話題に上っていませんよ。

わたし どんな問題ねえ。
解く前に、その問題を考えるのが、
難しいですねえ。

リョーシカ
ではそろそろ、来週としましょうか。


わたし
ええっ! マテ・リョーシカ!


(つづく)



週刊リョーシカ!
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量子計算にもゲートがあって
回路が組めるんだ!
と思うと、
なんとなく量子コンピュータも
身近に感じられたりします。

量子計算ならではの
「ユニタリー変換」があって
それがゲートに分解できて、
というところまで、
とうとう、やってきましたね。

そこで来週は、
どんな計算を、どのように解くのか
という問題を、
取り扱いたいと思います。

ずばり、「アルゴリズム」です。

どうぞお楽しみに。


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