第45週:量子ビットで計算しよう!
2008-09-26掲載

さていよいよ今回は、
量子計算のプロセスに
入ってまいりますよ。

第43週で見てきた──
量子の0であると同時に1でもある
という重ね合わせの性質を使って
ヒルベルト空間という広い空間で
並行処理していく。
──

なども、思いだしながら
今度は古典的な計算との違いも
確認していきましょう。

さてさて、
ではどうぞ。

わたし 計算ってことは、
コンピュータのなかみがどうなってるか
ってことだと考えても
いーんですよね?

リョーシカ
いいですよ。


わたし なら、古典的なコンピュータの場合は
0と1をぱちぱち順に並べていく
イメージで計算していくんでした。
(第21週を参照)

相変わらずイメージは
パチパチなんですが……。
(第42週を参照)

リョーシカ そうですね。
その時に計算の基本単位となるのが、
「ビット」です。

わたし
ふむふむ。


リョーシカ 一方、量子計算では、
基本単位は「量子ビット」です。


わたし
ふむふむ!


リョーシカ 量子ビットという基本単位が、
そもそも「重ね合わせ状態」にあり、
これは「0」と「1」が同時に起こっている、
ということですから、
これを計算に使えば、
並列的に計算できるのではないか、
と考えることができます。

わたし なるほど!「同時に起こっている」
というところが、
行けそうな感じがします。

ただ、どうもそこいらへんが、
あやふやになってくるあたり
でもあるんですが……

リョーシカ
どこがわかりにくいですか?


わたし うーん、つまり
「量子ビット」が
「ヒルベルト空間」
「同時に起こっている」って
なんのこっちゃ?、って
なっちゃうんですよ。


リョーシカ うーん……では次元を考えましょうか。
点がひとつあったら、
それは0次元ですね。

0の地点から点が1目盛りずつ
動いていくと、1次元の世界になります。

1bit1次元の世界


リョーシカ この、0から1目盛り目までの
向きのある長さを
「ユニットベクトル」と言います。


わたし この場合なら、0から
たとえばブロックの緑の突起の1つ目までが
ユニットベクトルと考えれば
いいわけですね?


リョーシカ そうですね。
またマトリョーシカで表されている点は、
0からどの方向へ、どのくらいという
ベクトルを表しています。


わたし ベクトルってことは、
どのくらい、という量なんだけど
向きがあるものである、と
だいたい考えておけばいいですか?


リョーシカ ええ。そこで2次元になると、
そういうベクトルが2つです。
直交する向きにあるたてとよこに
ベクトルを表す点が、それぞれあります。


2次元の世界

リョーシカ するとこんどは
この2つのベクトルを足し合わせたところにも
点を考えることができます。
この点もやはりベクトルを表しています。

このように、単なる点ではなく
0からの距離を持つベクトルを
考えることによって、
平面上にある点のひとつひとつを
ベクトルに対応させることができます。


わたし でもって、3次元になると
たて・よこに、おくゆきが加わって
わたしたちの住んでいる世界に
なるんですよね。

3次元の世界

リョーシカ そうなんですが、
「空間」っていうと
時空のことを思うかも
しれないのですが……

今話題にしている空間は、
ある物理系の状態がこのようになっている
ということを表現するための空間で
時空のことではありません。

わたし へっ?
うーん。


リョーシカ そこで、計算に戻りましょうか。

古典的な計算の場合、
0または1になりますね。

では2ビットだと、
取り得る0と1の組み合わせは
何通りになりますか?

わたし ええと、それは──
00、01、10、11の4通りです!


ビット数と組み合わせの数

リョーシカ
そうです。3ビットなら8通りです。


わたし
意外といっぱいあるんですねえ。


リョーシカ そこで量子コンピュータを
作ることを考えると、
古典的なビットが取り得る
これらの組み合わせを
量子ビットもきちんと
担えなければいけません。

わたし 量子ビットだって
ぱちぱち測ったならば、0か1で
古典の場合と同じことが
できなきゃいけないんですよね?

リョーシカ そうです。
こんどは量子ビットですから、
古典的に取り得る組み合わせの
重ね合わせというものが考えられるわけです。

そこで量子ビットがひとつの場合に
さっきの空間の話を思い出すと……
たてとよこの直交する状態がありましたね。

この2つのユニットベクトルの足し合わせで
平面のすべての点をあらわせたことを思い出すと
0と1が同時に起こっている状態
というのは、たくさんあることが
想像できます。

3量子ビットなら、
ビットの組み合わせでできる可能性が
8通りですから、こんどは
8つのユニットベクトルの足し合わせで
できる空間を考えましょう
というわけです。

たいへん高次元な空間になります。


わたし たくさんの組み合わせが
答えへ向かって同時に進んでいくと
もしかして……
だから、並行計算ができる?

リョーシカ
マトリョーシカ!


わたし だけど……
量子コンピュータに使う
量子ビットの数って
2つや3つじゃないですよね?

リョーシカ そうですね。
量子ビットの数が20とか30ぐらいでも
そのヒルベルト空間は非常に広くなります。

では、今週はこのへんで。

わたし
ちょっと! マテ・リョーシカ!


(つづく)



週刊リョーシカ!
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『週刊リョーシカ!』では
これまで
1:マトリョーシカ編
2:量子力学編
3:情報処理編
4:確率の考え方編
とお届けしてきたわけですが、
やはり量子コンピュータというのは
その総集編という感じがいたします。

ぜひ以前のページも
参考になさってくださいね。

来週もずんずん
量子コンピュータらしくなってまいりますよ。

なお一週お休みいたしまして、
ご迷惑をおかけいたしました。

ぜひ、次号もお楽しみに。


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