光合成におけるゆらぎと量子力学
植物やバクテリアは太陽光を集めるために、タンパク質でできたアンテナを持っています。そして1個1個のタンパク質の中に光を吸うクロロフィルがたくさん含まれています。ところがアンテナのサイズもバランスで、光をいっぱい集めるためには大きなアンテナが必要である一方、大きなアンテナを使うと光反応中心までの距離が長くなるため運ぶのが難しいというトレードオフの関係があります。
たとえば紅色細菌では、アンテナが光を採り込むと、そのエネルギーを量子力学的に円環状に広がった状態に置きます。つまり、光子が"粒子"としてどこか1点に局在して現れるのではなく、"波"のように「非局在化」させているのが特徴です。紅色細菌は、この状態によって真空との相互作用を防ぎます。太陽光を吸って基底状態から励起状態へ持ち上げられたエネルギーを維持することができるため、搬送ロスゼロで光反応中心へ運ぶことができる要因のひとつとなっています。
アニメーションでは、アンテナがキャッチした光エネルギー(赤色)が、光反応中心(Reaction center, 紫色)へ向かってポンポンと遷移していく様子が示されています。