ハイブリッドにさらに光を加えたい
僕は沖縄で、超伝導回路とダイヤモンドという材料に加えて、誰でも見ることができる光を使いたいと考えています。ハイブリッドによって量子演算器とメモリを量子状態を保って(←コヒーレントに)つなぐことができたので、これに光が加われば、量子通信あるいは量子ネットワークへとシステムを拡張できます。光とつなぐために僕は、マイクロ波の量子状態が光の量子状態へ、またその逆方向へも、コヒーレントに変換できる「量子トランスデューサー(変換器)」を実現したいと考えています。材料だけでなく、電磁波もマイクロ波と光のハイブリッドにして、量子領域を実現したいと考えています。効率も、従来効率の10のマイナス9乗%に対して、100%を目指しています。
光を入れるためにいったん3次元に戻る
ではどのように実験をセットアップしたらいいかというと──実は、まだ模索しています(笑)。というのも、超伝導回路のように平面上にコンパクトに集約された極低温の世界に、エネルギーの大きい光を導入するというだけでも、いろいろな問題があるからです。そこで僕は、量子回路を洗練させる方向からいったん離れて、大きな3次元の構造を考えています。一見、退化のように見えますが、これによってまずは光を導入します。そしてマイクロ波の共振器とスピンの周波数を少しずらしておくことで、必要なスピンだけに相互作用が起こるようにします。材料はシリコン欠陥が含まれるものを考えており、以前から連携している日本の研究者から提供いただければ、かなり高効率で変換できるのではないかと期待しています。ただし光子は損失が大きく、検出が難しいので、実際に使われる製品になる過程では、多くの改良が必要になるだろうと思います。