量子情報の最先端をつたえる
Interview #018

QCrypt 2015 @一橋講堂
公開日:2015/12/15

【2】物理から変わるサイバーセキュリティの技術

物理学と暗号学の運命的出会い「BB84」

そもそも量子暗号とは、1900年のマックス・プランクに始まる量子力学という現代物理学の大きな流れと、コンピュータの急速な発達によって誕生した現代暗号の世界が、偶然の出会いによって生まれた分野です。量子暗号誕生のきっかけとなった「Physics Meets Cryptography」の舞台は、なんとバカンスのプールサイド。IBM Researchのチャールズ・ベネット(C. H. Bennett)とモントリオール大学のジル・ブラザール(G. Brassard)が偶然に出会い、気楽な雑談からアイデアが生まれたというエピソードは、もはやこの分野の伝説と言ってもよいでしょう。1984年に世界で初めて開発された量子鍵配送のプロトコルは、2人のイニシャルをとって「BB84」と名付けられ、その後アーター・エカート教授(プロフィールはこちら)らによって大きく進展していきました。今回のコンフェランスでは、「BB」こと歴史上の本人によって、壇上でこの量子暗号誕生のいきさつが改めて披露され、会場からも大きな拍手が起こりました。

サイバー社会を担う「量子的安全」というキーワード

ところで、では今なぜQCryptが担う分野が重要なのでしょうか?─今回のコンフェランスで複数の講演で提示されたキーワードのひとつに「量子的安全(Quantum-safe)」がありました。われわれは現在、RSA暗号に代表される今日のインターネットを支える暗号技術の安全性が、限界に達しつつある時代を迎えています。RSA暗号への脅威のひとつとして想定されているのは、処理が飛躍的に高速な量子コンピュータなどが現実化したところで起こる「量子的な攻撃(quantum attacks)」です。まさにこのような流れから、大規模量子情報処理への対応を可能にする「量子的安全」が大きな技術的目標となってきます。サイバー社会におけるこの新しい安全性の実現のために、量子鍵配送やこれを支える技術は、社会基盤や私たちの生活に関わる応用化へと、確実に進歩してきました。そしてその先に、今まさに広大な量子情報技術という沃野を生み出しつつあるのです。

世界の様子をながめてみよう
Welcome to the Quantum World #018

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