量子から古典への移行を連続的に捉える
ヤングの実験とそれに続く電子銃の実験(→#015参照)で見たように、波という状態が、全然違う粒子という状態に変わっている。ところがその2つの状態は、すごく断絶していて、最初1と2という状態があったのに、なんだか知らないけど途中で1だけ、あるいは2だけになったという現象として捉えられている。この現象を、時間的に連続的に発展する物理系のダイナミクスとして、時間発展として検証したいと思っています。
量子の波の干渉をフェムト秒で観測しアト秒で制御する
われわれは、つまり、粒子の状態になってしまうぎりぎりのところで波を見たい。波にもっとも顕著な性質といえば、やっぱり干渉です。そこでわれわれの研究室では、量子の波の干渉をいかに速く精密に観測して制御できるかという技術を追求してきました。これが光を使ってフェムト秒レベル(フェムト=10-15)の速さで干渉を可視化し、アト秒精度(アト=10-18)で制御する技術です。この技術を使って、真空中にある孤立した分子の中の量子の波の干渉をフェムト秒ピコメートルレベル(ピコ=10-12)で観測しアト秒レベルで制御する実験にいくつか成功してきました。
多体系の時間発展を世界最速で見る
最近は、真空中にある孤立した分子から一歩進んで、多数の原子の集団運動をコントロールできるようになってきています。このように多くの粒子が集まって、強く相互作用し合っているような系を、物理の世界で「多体系」「多粒子系」といいます。これまでのような1、2個の分子ではなく、この多体系にわれわれの技術を結集して量子の波の時空間発展を見ていけば、量子力学的な世界観と古典力学的な決定論的な世界観をうまく、滑らかに接続できるのではないか──というふうに考えています。