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『量子力学の考え方』を読むと、何がわかりますか?
『量子力学の考え方──物理で読み解く量子情報の基礎──』より
聞く人: かえる@ようこそ量子LAB 答える人: 香絵博士
まず目次はこうなっているケロ。
ぜんぶで9章構成だケロ。
そうですね。この本のひとつのポイントは、言ってみれば「わかるところを先にやろう」ということです。量子を学んだことのある方にはお馴染みかと思いますが、ニュートン以来の古典力学とは違って、量子力学は直感的にわかりにくい、私たちが抱いている科学というのはこういうものだ、という常識に合わない、そういったことだらけです。
というのも、量子力学という学問が成立していくまでには、多くの物理学者がその矛盾と格闘し、議論を重ねていきました。これまでの理論には合わない事実が確認され、これを理解するための新しい理論的なアイデアが生まれる。新しい考え方は、「そんなはずはない!」とはげしい抵抗に遭うものの、その正しさを裏付ける証拠がひとつ、またひとつと現れ始める。そのたびに疑問が生まれ、やがてより大きな理解によって問題が超えられる、そのようにして徐々に、量子という世界の全体像がわかってきました。それが、量子力学という体系です。
あーでもない、こーでもないってやってると時間がかかるケロ。
その通りです。そこで私たちは、過去の優れた物理学者たちとは違って、すでにできあがっている体系から学ぶことができます。これは、全体像がまだよくわからないままに議論するのとでは、大きな違いです。言い換えれば、発見するのは難しくても、すでに発見されているものを検証するのは、比較的簡単だ──と言えば、容易に想像できるでしょうか。
この本で量子コンピュータのこともわかるケロ?
そうですね。量子系と情報がどのようにかかわっているのかは、必ずしも自明ではないと思うのです。そこでこの本では全体として、量子系を操作することを、情報処理として考えることができる、ということを示しています。またそのように考えていった総まとめとして、第9章で「量子情報処理」を採り上げています。
しかし量子力学って、やっぱり奥が深いケロ!?
というよりも……何も量子力学に限らないのです。物理系を考える場合には、あの時こうだった、じゃあこんな場合にはどうなんだろうか? というように、さまざまな例を考えることが重要です。まずはこのようにはっきりと疑問に思うことが、とても大切なことなのです。
そうしたら今度は、この思いつきを検証しなければなりません。この際、不可欠なのは、正しい道具立てです。理論的に正しい考え方を進めるには、数学的表現が大いに役立ちます。数学的な整備が整っていない場合には、自分で正しく、そしてうまく使いこなせる道具を考え出さなければなりません。
そこで、この本には、このような道具立てを盛り込みました。疑問に思い、正しい手順で検証する──つまり、こういったことがまさに「科学的方法」なのです。ですから、量子力学というテーマで解説しているけれども、ここで身に付けた方法は、他にもいろいろと適用できるはずですし、ぜひいろいろと役立ててほしいと願っています。
ブツリが濃いケロ。
というわけで、まずは量子です。現代に生きる私たちが量子について知りたいと思えること、そしてわかり得ることを、本書を通じて、確実に得てください。
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