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FILE: 008 『量子力学の考え方』 page1

質問 『量子力学の考え方』は理系のための本ですか?

『量子力学の考え方』は忙しい研究活動の合い間を縫って、香絵博士が書き上げた"教科書"。しかも、これまでの教科書にはなかった量子力学のエッセンスが、ふんだんに盛り込まれている一冊です。ところで「数理・情報系必携」とのことですが、それ以外の勉強をしている学生さんには不向きなんでしょうか?──そこでまずは「かえる」が手にとってみましたよ……。

『量子力学の考え方──物理で読み解く量子情報の基礎──』
『量子力学の考え方──物理で読み解く量子情報の基礎──』(臨時別冊・数理科学 SGCライブラリ-68 サイエンス社)は、全国有名書店・大学生協の理工書・雑誌のコーナーに並んでいます。ぜひお手にとってご覧ください。(2009年2月現在。なお雑誌のため、amazonをはじめネットでは販売していません。)

聞く人:かえるかえる@ようこそ量子LAB 答える人:香絵博士香絵博士

かえるもしかして……理系のための本だケロ?


香絵博士そうですね。しかしひとくちに理系といっても、いろんな理系の人がいますよ。

確かにひと昔前までは「量子力学」を学ぶ人は、物理専攻の学生や研究者といった物理関係の人に、ほぼ限られていました。しかし量子力学の知識が必要なのは、今や物理学科の学生だけではありません。

その背景には、ここ10年ほどで、私たちがアクセスできる量子の世界がぐんと広がってきたことがあります。それによって、これまでは思いも寄らなかった、広範囲に及ぶさまざまな分野で、量子的な考え方が必要になってきたのです。

かえるどんな人が量子力学を学ぶんだケロ?


香絵博士化学、ナノテクノロジー、生物……等といったいろんな分野で、量子的な取り扱いがますます関心を集めています。たとえば「量子効果」といったものなども、とても重要になってきていますね。

またコンピュータ・サイエンスや通信技術の分野は、量子的な考え方によって「量子情報処理」と呼ばれる学際的な新しい領域が生まれるという、たいへん特徴的なかたちで発展してきました。この分野は、特に21世紀に入ってからめざましい発展を遂げています。

かえるしかし……
ブツリ以外の"門外漢"がリョーシを学ぶのは大変そうだケロ?


香絵博士 香絵博士確かに、おっしゃる通りです。物理学を学んできた学生を対象にしている場合には、物理的な考え方が身についているという前提で「量子力学」を講義していくことになります。しかしさまざまな分野が背景となっている場合には、簡単にはいかないと思います。

特に数理・情報系の学生さんが陥りがちなのは、式の取り扱いは得意なのだけれど、その背後にある物理的な意味が欠落してしまい、量子の世界が感じ取れないままになってしまっているという状態です。


かえるむむ?
式には物理的な意味があるんケロ?


香絵博士はい。式は、物理系を正確に表現する手段なのですよ。


かえる式はいいから、意味だけ知りたいケロ?


香絵博士はいはい。そういう使い方もありますね。この『量子力学の考え方──物理で読み解く量子情報の基礎──』は、式を飛ばして日本語のところだけ拾っても意味が通じるようになっています。ですから、そんなふうに読んでいただいても、まったく構いませんよ。