FILE: 006講演会レポート
『量子で変わるコンピュータと暮らし』 page1
会場である「11月ホール」は、近畿大学の創立記念日、大学祭開催の月、竣工月にちなんで名付けられたという、1,500人収容の大ホール。そんな舞台で、日本数学会・日本物理学会合同開催の「市民講演会」は、幕を開けました。 2008年3月22日「市民講演会」の様子 ──ヨーロッパの田舎道、向こうからやってくるのは馬車でしょうか……。オープニングに登場したのは、そんなノスタルジックな風景でした。 これはかなり古めかしい感じの風景です。だいたい18世紀頃でしょうか。……一方、こちらはどうでしょうか、現在のコンピュータの発展にかかわりの深いシリコンの写真です。さて、この2つの図柄に現れている技術、現在の私たちからみると一方はずいぶん古くて、もう一方は最新技術のように見えますが、量子の世界から見るとどうでしょうか──、なんと、いずれも「古典的」な世界だということになるんです。 ──現在の私たちが使っているコンピュータ、その最新技術でさえ「古典的」と呼ぶ量子は、いったいどんなものなのでしょうか? そこでまず、いま量子が注目を集めている理由が明らかにされ、続いて古典と相反するものとして発達した量子の歴史が紹介されました。 「量子」という概念が最初に誕生してから、それが物理学者の間で理解され、解明されるまでに実に約20年を要し、その解釈をめぐってさらに多くの年月がかかっていることが注目に値します。つまり、量子という考え方が、いかに人間にとってなじみのない、新しい考え方であったかがわかるからです。 ──世界的にも、量子は「わからないものの代名詞」といった扱いを受けることが少なくありません。けれども、それもそのはず、アインシュタインをはじめ世界の名だたる物理学者が何十年もかけて大論争した末、やっとミクロの世界のルールと認められた考え方なのだ、ということを知れば、なるほどと納得がいくのではないでしょうか。 |