FILE: 001『ようこそ量子』を大公開!page1 量子コンピュータって何ですか?
「量子」のふるまいを利用した「量子コンピュータ」を作ろうという研究が、いま世界中で進められています。「量子」の側から見ると、スーパーコンピュータを含む現代のコンピュータは「古典的コンピュータ」と呼ばれ、「量子コンピュータ」はこれを、スピードでもパワフルさでも圧倒的に凌駕すると考えられています。 あなたのオフィスが、もし"量子的"だったら?──量子コンピュータに 特徴的な「並行処理」をイメージした<量子的オフィス>(第4章より) 聞く人:かえる@ようこそ量子LAB 答える人:香絵博士 上の写真は、私たちが<量子オフィス>と呼んでいるイメージです。図の中の彼女は文献に目を通したり、メールチェックして返事を書いたり、本を整理したり、アイデアをホワイトボードに書いてみたり……といくつもの仕事を同時に処理しています。もしあなたのオフィスが"量子的"だったら?……と、ふだんのあなたのオフィスの様子に置き換えて、ちょっとイメージしてみてください。 たくさんのプロジェクトが同時に進行してるイメージだケロ? それに仕事も早く終わりそう……。 きっと高速でしょうね。彼女のミッションは、数式を解いて答えを求めるといったものでもいいですし、意志決定のようなもっと複雑な仕事も処理することができます。私たちのふつうのオフィス、つまり量子の側から見ると"古典的"なオフィスでは、やらなければならない仕事のうちどれか一つを選んだら、一般に他のことはできないのがふつうです。ところが"量子的"になったとたん、彼女はオフィスのあらゆるところに出現できるんです。しかも2つ以上の位置に同時に存在して、複数の仕事を並行して行っていきます。 でも、同時に別の仕事をしてたら、いろんな答えが出てくるケロ? 確かにそうですね。ただ<量子オフィス>では、すべての作業が一つの目的に向かって進められており、全体として一つのプロジェクトを成している点も、大きなポイントです。そして各作業はそれぞれ別のプロセスを辿っていますから、最終的にはこれらをまとめて、一つの答えを導かなくてはなりません。この時に役立つと考えられているのが、量子的な性質のひとつである「量子干渉」という現象です。量子干渉というプロセスをうまくコントロールすることにより、あてにならない答えを淘汰して最も正解の確率の高いものだけを残すのです。 答えが出たようだケロ? はい。現在のところ、量子コンピュータはちょうどこのような手順で構想されています。しかしながら量子的な世界は、観測すると量子的な性質が失われてしまうため、実際には、私たちはここに描かれているような現象を観察することはできないんです。したがってそこはフィクションとして、このイメージでは、もし量子による情報処理を見物するとしたら、という様子を描いています。中で行われていることは、なるべくそっとしておいて、最後の最後で測定して答えを手に入れるのです。 変わったルールだケロ? ええ、かなり変わっています(笑)。でもこれは量子の不思議さのほんの一部です。私たちの常識では理解できないような奇妙なことが、量子にはほかにもどっさりあるんですよ。 |