「ハイブリッド」はやめられない
現在いろいろな材料をつかった量子的なシステムが試みられていますが、なかでも私が好きなのは違う系を組み合わせてつくるシステムです。先ほどのように振動するドラム面の薄膜と超伝導回路を組み合わせてもいいし、光共振器と、前後に振動する鏡を組み合わせる方法もあります。われわれは、その両方を一緒にやっても構わないし、またこれらのシステムをどんどん大規模化しても構わない。むしろ、大きくできないという理由こそ、まだ見つかっていないのです。
量子操作をもっと自由に
このようにつくってきてわかったことは、これまでのように古典はマクロ、量子はミクロというとらえ方は、まったく正しくないということです。量子の振る舞いを完全にコントロールできるのならば、思い通りに組み立てられるはず。回路の中に特定の量子的な振る舞いが必要ならば、そのように0からデザインして組み込めばいいのです。量子システム光学をひとことで言うと、従来のように自然にある量子的な振る舞いを単に探し、観測するのではなく、量子的な振る舞いを大きなミ クロ系や巨視的な系で自分たちで作り出そうというものなのです。
実験の研究プロジェクトについて
──ご自分の装置で量子コヒーレンスをご覧になることはありますか?(蔡)
ええ。冷却技術が使えるようになった昨年に、まさにブレークスルーがおきました。レーザ冷却を使って、ドラム面をどんどん冷却していき、基底状態にまで下がったと言うことができる状態が生まれました。
──ガリウムヒ素をお使いですか?(蔡)
使っています。ガリウムヒ素は、二次元で電子を捉えることができます。ここでもまた上下する振動を使って、電圧を変えるという動きをすべて量子的に操作することができますね。
──量子ビットと他のシステムをカップルさせることはありますか?(蔡)
量子的なシステムと量子ビットをカップルさせるのは、もうひとつの重要なポイントです。さまざまな多体物理系の大規模量子シミュレーションを組み立てることにはとても興味があります。たくさんの共振器を作って、光を使って量子的な相互関係をつくり、それらにひとつずつ量子ビットを入れてどのような量子的なふるまいが起こっているかを調べたりすることができます。